私は健康麻雀店を経営して22年になる河原健治と申します。少し昔の話ですが、友だち登録数150人ほどのLINE公式アカウントを使って、月に1〜2回程度の配信を続けていた時のお話です。もしかするとあなたも今、同じような状況ではないでしょうか。
配信するたびに「また迷惑だと思われているのでは」「押し売りになっていないだろうか」という不安が頭をよぎります。実際、配信への反応は思ったより薄く、「既読」はつくものの返信やアクションは期待するほど得られません。
でも今日お話しする内容は、そんな私たちの常識を根底から覆すものです。17世紀のイギリスで起きたある出来事が、現代の売上アップに革命をもたらす可能性があるのです。
また今日もお客様に断られてしまった、そんなあなたへ
昨日、私の店舗の常連さんである田中さんが、こんなことを言いました。「河原さんのLINEって、他の店と全然違うんですよね。なんだか安心するというか…」この言葉を聞いて、私は数年前の自分を思い出していました。
「押し売りになってしまう」その罪悪感の正体
あなたは今、美容室を経営していて、新しいヘアトリートメントを導入したとします。「お客様に喜んでもらいたい」という純粋な気持ちでLINEを送ります。「今月限定の特別ヘアトリートメント、いかがですか?」
送信ボタンを押した瞬間、心の中に小さな声が響きます。「また営業してしまった」「お客様は迷惑に思っているかもしれない」「もう配信を止めたほうがいいのかな」
私も同じでした。月1回の健康麻雀大会の案内を送るとき、いつもこの罪悪感と戦っていました。でも、この罪悪感の正体を理解したとき、私の配信は劇的に変わったのです。
真面目な経営者ほど陥る「提案への恐怖」
整体院を経営している友人の佐藤さんから、こんな相談を受けたことがあります。「河原さん、メンテナンスコースを作ったんですが、既存のお客様に提案するのが怖くて…」
佐藤さんは本当に技術の高い先生で、お客様のことを心から思っている方です。だからこそ、「売り込みたくない」「信頼関係を壊したくない」という思いが強すぎて、結果的に良いサービスをお客様に届けられずにいました。
これは私たち真面目な経営者に共通する特徴です。
- お客様との関係を何より大切にしている
- 短期的な利益より長期的な信頼を重視している
- 「押し売り」という言葉に強いアレルギーを持っている
- 断られることへの恐怖が提案そのものを躊躇させている
でも実は、この真面目すぎる姿勢こそが、お客様にとって最良の選択肢を提供する機会を奪ってしまっていたのです。
でも実は、その優しさこそが最大の武器だった
小さなカフェを経営している山田さんが、最近こんな体験をしました。常連のお客様が「新しいコーヒー豆はないの?」と聞かれたとき、山田さんは「実は、お客様のお好みに合いそうな豆を3種類仕入れていたんですが、押し売りになってしまうかと思って…」と答えました。
するとそのお客様は「なんで教えてくれなかったの!私、新しい味を探していたのに」と、むしろ残念がられてしまったのです。
私たちが「押し売り」だと思っていることは、実はお客様にとって「情報不足」や「選択肢の欠如」として受け取られていることがあります。あなたの優しさや配慮は間違っていません。ただ、その表現方法を少し変えるだけで、お客様により良いサービスを提供できるのです。
17世紀の馬屋が教えてくれた売上アップの本質
時は1600年代のイギリス。ケンブリッジにトーマス・ホブソンという馬屋の主人がいました。彼の商売のやり方は、当時としては非常に変わったものでした。そして、この300年以上前の出来事が、現代の私たちに売上アップの本質を教えてくれるのです。
ホブソンという馬屋の主人が残した教訓
ホブソンの馬屋には多くの馬がいましたが、お客が来ても「好きな馬を選んでください」とは言いませんでした。代わりに彼はこう言ったのです。「厩舎の入り口に一番近い馬を貸し出します。嫌なら帰ってください」
現代の私たちから見れば、なんと不親切な商売でしょうか。でも興味深いことに、ホブソンの馬屋は大いに繁盛していました。なぜでしょうか?
実は、当時の他の馬屋では、お客が「この馬を貸してください」と言うまで、延々と馬の説明をしていました。お客は馬の専門知識がないため、どの馬を選べばいいかわからず、結局何も決められずに帰ってしまうことが多かったのです。
一方、ホブソンは「この馬か、何もなしか」という明確な選択肢を提示しました。お客は複雑な判断をする必要がなく、「この馬で十分だ」「やっぱり今日はやめておこう」という簡単な決断ができたのです。
「選択肢がない」ことの真の問題点
私たちの現代のビジネスでも、同じようなことが起きています。エステサロンの例を考えてみましょう。
多くのサロンでは、「今月のおすすめフェイシャルコースはいかがですか?」というように、1つのメニューだけを提案します。これは一見親切に見えますが、実はお客様を困らせてしまっているのです。
お客様の心の中では、こんな会話が繰り広げられています。
「フェイシャルコース…興味はあるけど、他にどんなメニューがあるのかな?」 「値段は適正なの?他と比べてどうなんだろう?」 「今本当に必要?少し考えてからにしようかな」
結果として、お客様は決断を先延ばしにし、そのまま忘れてしまうことが多くなります。
300年前も今も変わらない人間心理の法則
ホブソンの時代から現代まで、人間の決断における心理は基本的に変わっていません。私たちは以下のような特徴を持っています。
- 選択肢が1つだけの場合、「取るか取らないか」で迷ってしまう
- 選択肢が2つ以上ある場合、「どれが良いか」を比較することに集中する
- 比較検討に集中すると、「買わない」という選択肢は後回しになる
- 複雑すぎる選択肢は、かえって決断を遅らせる
この法則を理解していた商人は、300年前も今も成功しているのです。
科学が証明した「9%から32%へ」奇跡の数字の秘密
「でも、それって本当に効果があるの?」そう思われるかもしれません。実は、現代の科学がこの効果を明確に証明してくれています。その実験結果は、私たち小規模経営者にとって希望に満ちたものでした。
DVDプレーヤー実験が明かした驚愕の事実
アメリカのテュレーン大学で、マーケティングの研究者であるダニエル・モーチョン教授が興味深い実験を行いました。被験者にDVDプレーヤーの購入を検討してもらう実験です。
まず、ソニー製品1つだけを見せた場合、「購入する」と答えた人はわずか9%でした。私が初めてこの数字を知ったとき、「やっぱり1つだけの提案では限界があるのか」と感じました。
ところが、同じソニー製品と、フィリップス製品の2つを並べて見せたところ、なんと32%の人が「ソニー製品を購入する」と答えたのです。単純計算で約3.6倍、つまり4倍近い効果です。
私はこの結果を知ったとき、正直震えました。小さなアパレルショップを経営している姉に、すぐにこの話をしました。姉も「それって本当なの?」と最初は信じられないようでしたが、実際に試してみると…
なぜ人は選択肢があると決断するのか
この現象の背景には、深い心理学的理由があります。私たちの脳は、与えられた情報をもとに最適な判断をしようとする性質があります。
選択肢が1つしかない場合、脳は以下のような思考パターンを辿ります。
- 「これが本当に必要かな?」
- 「他にもっと良いものがあるかもしれない」
- 「少し調べてから決めよう」
- 「今度考えよう」(そして忘れる)
一方、選択肢が2つ以上ある場合の思考パターンは、まったく違います。
- 「AとBの違いは何だろう?」
- 「自分にはどちらが合っているかな?」
- 「価格や特徴を比較してみよう」
- 「Aの方が良さそうだ」(決断)
注目すべきは、「買わない」という選択肢が思考の中心から外れることです。脳が「どれを選ぶか」というモードに切り替わると、提示された選択肢の中から最適なものを見つけることに集中するのです。
あなたの店舗でも起こりうる「4倍効果」の可能性
この効果は、業種を問わず応用できます。実際に私の周りの経営者たちが試した結果をいくつかご紹介しましょう。
ネイルサロンの田辺さんは、「今月のおすすめネイルアート」を1つだけ紹介していましたが、「シンプル系とゴージャス系、どちらがお好みですか?」という2択にしたところ、予約が1.8倍に増えました。
小さなレストランの鈴木さんは、「本日のおすすめパスタ」を「トマト系とクリーム系、どちらにしますか?」に変更。結果、注文率が2.3倍になりました。
もちろん、すべてのケースで4倍になるわけではありません。しかし、多くの場合で明確な改善が見られることは間違いありません。
重要なのは、この効果が「特別な技術」や「高額な投資」を必要としないことです。必要なのは、発想の転換だけです。
売上アップの新常識「選ぶのはあなたです」という魔法の言葉
選択肢を提示することの効果を理解していただけたと思います。しかし、実際にお客様に提案するとき、どのような言葉を使えばよいのでしょうか。ここで、さらに強力なテクニックをお話しします。
「でも、あなたは自由です」が持つ心理的効果
フランスで行われた興味深い実験があります。研究者が道行く人に「すみません、バス代を貸していただけませんか?」とお願いします。普通にお願いした場合、協力してくれる人は10%程度でした。
ところが、同じお願いの最後に「でも、あなたは自由です(But you are free)」という意味の一言を付け加えると、協力率が2倍に跳ね上がったのです。
この「BYAF(But You Are Free)テクニック」と呼ばれる手法は、相手に「選択の自由がある」ことを明確に伝えることで、心理的な圧迫感を取り除き、むしろ積極的な協力を引き出すのです。
私たちの商売でも、同じ効果が期待できます。
LINE配信で今すぐ使える実践的フレーズ集
私が実際に使って効果があったフレーズ、そして他の業種の経営者から教えてもらった成功例をご紹介します。これらは明日からでも使えるものばかりです。
美容関係の場合:
- 「乾燥対策コースと美白コース、どちらがご興味ありますか?もちろん、今回はパスでも全然大丈夫です」
- 「スタンダードプランとプレミアムプラン、どちらが向いているかご相談しませんか?決めるのはあなたです」
飲食関係の場合:
- 「今週は魚料理と肉料理、どちらが気分ですか?もちろん、今度の機会でも構いません」
- 「ランチセットとディナーコース、どちらでご予約いたしましょうか?選ぶのはあなたです」
リラクゼーション関係の場合:
- 「疲労回復コースとリフレッシュコース、お身体の状態はいかがですか?無理されなくても大丈夫ですよ」
- 「60分コースと90分コース、お時間はどちらが都合よろしいでしょうか?ご都合に合わせてくださいね」
押し売り感を消す「選択の自由」の与え方
これらのフレーズに共通しているのは、以下の3つの要素です。
- 複数の選択肢を提示している
- お客様の都合や気持ちを尊重している
- 断ることも含めて「自由に選べる」ことを明確にしている
特に3番目の要素が重要です。お客様が「断っても大丈夫」「無理に決めなくても良い」と感じると、かえって前向きに検討してくれるようになります。
これは私たちが普段感じている「押し売りになりたくない」という気持ちと完全に一致しています。つまり、私たちの優しさや配慮こそが、最も効果的な営業手法だったのです。
健康麻雀店の河原さんが実践した選択肢配信の実例
ここで、私自身の体験をお話しさせてください。理論だけでなく、実際にどのような変化が起きたのか、正直にお伝えします。
単一メニュー提案から複数選択肢提案への転換
以前の私のLINE配信は、こんな感じでした。
「来週火曜日の午後2時から、健康麻雀の体験会を開催します。初心者の方も大歓迎です。参加ご希望の方はお返事ください」
この配信に対する反応は、正直なところ期待していたほどではありませんでした。150人の友だちに送って、返信があるのは3〜4人程度でした。
ある日、選択肢の理論を学んだ私は、配信内容を以下のように変更しました。
「来週は火曜日の午後2時と、木曜日の午前10時に健康麻雀の体験会を開催します。どちらの時間帯がご都合よろしいでしょうか?もちろん、今回はパスでも全然問題ありません。お気軽にお返事ください」
お客様からの感謝の声が増えた理由
この変更後、驚くべきことが起きました。返信をくれる方が8〜9人に増えたのです。約2倍の改善です。
しかし、数字以上に印象的だったのは、返信の内容が変わったことでした。
以前の返信: 「火曜日、参加します」
新しい返信: 「木曜日の午前中の方が助かります。ありがとうございます」 「火曜日でお願いします。時間の選択肢があるのは嬉しいです」 「今回は都合がつかないのですが、また次回よろしくお願いします」
明らかに、お客様の反応が温かくなりました。そして重要なのは、「今回は参加できない」という方からも丁寧な返信をいただけるようになったことです。
「押し売りしない営業」が生んだ信頼関係
冒頭でお話しした田中さんも、その頃からのお客様です。田中さんは後日、こんなことを言ってくれました。
「河原さんの連絡は、いつも『押し売り感がなくて』安心するんです。他のお店からの連絡は『これを買って』という感じが強くて、正直なところ負担に感じることがあるんですよね」
この言葉を聞いて、私は気づきました。お客様は「選択の自由」を何より大切にしている。そして、その自由を尊重してくれる相手を信頼するのだと。
現在では、体験会の案内だけでなく、様々な場面でこの手法を活用しています。
- 大会参加の案内(午前の部・午後の部の選択)
- 食事メニューの提案(うな重・天丼の選択)
- 定期的な利用の提案(週1回・月2回の選択)
どの場合も、以前より良い反応をいただけています。そして何より、お客様との関係が以前よりもずっと温かいものになりました。
あなたの中にある優しさが、最強の売上アップツールになる
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。17世紀の馬屋から現代の科学まで、長い旅路をともに歩んでいただきました。最後に、私があなたにお伝えしたい一番大切なことをお話しします。
「お客様想い」だからこそできる真の売上アップ
あなたが普段感じている「押し売りになりたくない」という気持ち。お客様との関係を大切にしたいという想い。これらは、決して弱さではありません。現代において最も価値のある、強力な武器なのです。
なぜなら、お客様が本当に求めているのは「自分で選ぶ自由」だからです。あなたの優しさや配慮は、まさにその要求に応えるものです。
私たちがすべきことは、優しさを捨てることでも、強引になることでもありません。その優しさを、より効果的な形で表現することです。
「選択肢を提示する」「選ぶ自由を明確にする」これらは、テクニックである前に、お客様への敬意の表れです。
明日から始める3つの選択肢配信ステップ
「わかったけれど、何から始めればいいの?」そう思われるかもしれません。ここで、明日からでも実践できる具体的なステップをご提案します。
ステップ1:現在の配信内容を見直す 今月送った配信を振り返り、「1つのメニューだけを紹介している」配信を見つけてください。おそらく、ほとんどの配信がこのパターンではないでしょうか。
ステップ2:2つの選択肢に分割する そのメニューを、2つの選択肢に分けて考えてみてください。
例:
- 「新しいフェイシャルコース」→「保湿重視コースと美白重視コース」
- 「ランチ営業開始」→「軽食メニューとしっかりメニュー」
- 「キャンペーン実施中」→「お試しプランとスタンダードプラン」
ステップ3:「自由な選択」を保証するフレーズを追加する 選択肢の後に、以下のようなフレーズを付け加えてください。
- 「もちろん、今回はパスでも全然大丈夫です」
- 「決めるのはあなたです」
- 「ご都合に合わせてくださいね」
一歩ずつ進む、あなたらしい成長の道筋
最初から完璧である必要はありません。私も最初は、文章を書くのに1時間以上かかっていました。「これで大丈夫かな」「お客様に嫌われないかな」と、送信ボタンを押すまでに何度も見直していました。
でも続けているうちに、お客様からの温かい反応が自信につながりました。そして何より、「押し売りをしない営業」という自分らしいスタイルを確立できたことが、大きな喜びでした。
あなたも、きっと同じです。今日から少しずつ、選択肢を意識した配信を始めてみてください。最初は2択から。慣れてきたら、より細かな選択肢も提示してみてください。
大切なのは、あなたの優しさを失わないことです。テクニックは手段であり、目的はお客様との信頼関係を深めることです。
300年前のホブソンが教えてくれた「選択の力」。現代科学が証明した「選択肢効果」。そして、あなたの中にある「お客様を大切にしたい」という純粋な想い。
これらが組み合わさったとき、売上アップは押し売りではなく、お客様への最高のサービスになるのです。
私は健康麻雀店という特殊な業種ですが、この原理はどんな業種にも当てはまります。あなたの業種でも、あなたらしい選択肢を見つけてください。
お客様の笑顔と、自然な売上アップ。その両方を手に入れる旅路が、今日から始まります。
