LINEの下書きを書き終えて、送信ボタンの前で手が止まった夜がありました。
2002年から健康麻雀店を経営しています。2022年4月、既存のお客様に向けてLINE配信を始めました。
当時の私は、こう書いていました。
「当店はアットホームな雰囲気で、初心者の方も安心して遊べます」
「私たちは、お客様一人ひとりに寄り添ったサービスを心がけています」
丁寧に書いたつもりでした。でも、画面を見返すたびに、どこかもどかしい気持ちが残りました。
店では、お客様からこんな言葉をいただきます。
「ここに来ると元気になる」
「行くところがないと思っていた」
「初めは緊張したけど、すぐ馴染めた」
どの言葉にも、場面がついていました。一方、私の配信文には、店の説明しかありませんでした。
良かれと思って書いた自己紹介が、読者の目線では「自分の話」になっていなかったのです。
・「私たちは〜」で書くと、読者が途中で離れてしまう
・直したいのに、何をどう変えればいいか分からない
・テンプレをコピーするより、自分で直せる見方が欲しい
そんな方のために、この記事では主語転換法をお伝えします。
完成文のコピー集ではありません。送信前に、自分の文章を読者目線へ戻すための見方です。
「私たちは〜」は、読む前に店側の話だと伝わる
スマホでLINEを開いたとき、読者が見ているのは自分のタイムラインです。
限られた時間の中で、人は自分に関係ある情報だけを選びます。
ここで「私たちは〜」「当店は〜」と始まる文章は、最初の一文で店側の話だと伝わります。
読者の頭の中では、こうなります。
「へぇ、そうなんだ。……で、私に関係あるの?」
この一瞬で、読む気が弱まります。
人は、何かを売ろうとしている側の言葉を、無意識に割り引いて聞く傾向があります。心理学では第三者の効果と呼ばれる現象のひとつです。
自分で自分を褒めている状態は、驚きがありません。近所の方が「あのお子さん、本当に素直でいい子ですね」と言ったら、信じたくなる。店舗の文章も、同じ構造です。
さらに大切なのは、人が動くのは言葉そのものより、頭の中で浮かぶイメージだということです。
「高品質なサービスを提供しています」では、画面が浮かびません。
「その肩こり、もう我慢しなくていいんです」なら、自分の体が思い浮かびます。
問題は、センスの不足ではありません。主語が店側に固定されていることです。
押し売りではなく共感で届ける考え方は、別の記事「買わせる心理学の正しい使い方」で詳しく解説しています。

健康麻雀店のLINEで、主語のズレに気づいた
800本以上の配信を重ねる中で、私は一つの違いに気づきました。
反応が得られる配信には、お客様の言葉と場面が入っていたということです。
経営者として書きたいのは、店の良さや想いです。読者が求めているのは、自分がその場にいるイメージです。
このズレを埋める方法が、主語転換法です。
言い換えのテクニックではありません。送信前に、誰の話をしているのかを見直すためのフレームです。
店側の説明を削るのではありません。同じ想いを、読者が「自分ごと」に感じられる形へ移す方法です。
私がLINE配信で実践してきた流れは、次の3つです。
- 主語が「私たち/当店」になっていないか見る
- 読者が想像できる場面に置き換える
- 送信前に「誰の話か」をもう一度確かめる
この3つが、次の章の骨格になります。
主語転換法|何を見て、どの順番で直すか
① まず「主語」を見る
下書きの1文目を見てください。
「私たち」「当店」「弊社」で始まっていませんか?
主語が店側なら、読者は「説明を読まされている」と感じます。主語が読者側なら、「自分の話かもしれない」と感じます。
違いは、たった一語です。でも、受け取り方は大きく変わります。
② 「だから読者はどうなる?」と問う
次に、こう自問します。
「それを知った読者は、どんな気持ちになる? どんな場面が浮かぶ?」
- 店のこだわり → 読者が感じる変化
- 店の実績 → 読者が得られる安心
- 店の雰囲気 → 読者が過ごす場面
書きたい内容はそのままでかまいません。主語だけを読者側へ移します。
③ 送信前に「誰の話か」を確かめる
最後に、3つだけ確認します。
- 主語は「あなた」側か?
- 読者の未来・場面が浮かぶか?
- お客様の声を代弁できているか?
これが主語転換法の全体像です。
直す前は「店の自己紹介」。直したあとは「読者の体験の予告」。
同じ想いでも、届け方が変われば、読者の受け取り方は変わります。
Before/After 3組で、直し方の見方を身につける
完成文を覚える必要はありません。3組の例で、見方だけ身につけてください。
例① 店の雰囲気を伝えたいとき
店側の文章
「当店はアットホームな雰囲気で、初心者の方も安心して遊べます」
読者目線へ変えた文章
「初めて来店された方から、『初めは緊張したけど、すぐ馴染めた』とよくおっしゃいます」
なぜ伝わり方が変わるか
前者は店の特徴の説明です。後者は、読者が自分をその場に置いて想像できます。主語が店から読者へ移ったからです。
例② サービスへの想いを伝えたいとき
店側の文章
「私たちは、お客様一人ひとりに寄り添ったサービスを心がけています」
読者目線へ変えた文章
「『ここに来ると元気になる』——そうおっしゃる方の言葉が、いつも励みになっています」
なぜ伝わり方が変わるか
「心がけています」は、店側の宣言です。お客様の言葉は、第三者の声として届きます。自分で言うより、代弁される方が信じやすいからです。
例③ 想いを伝えたいとき
店側の文章
「私たちは、温かい雰囲気づくりを大切にしています」
読者目線へ変えた文章
「『行くところがないと思っていた』——そうおっしゃった方が、また来店してくださいました」
なぜ伝わり方が変わるか
「大切にしています」は、店側の宣言です。お客様の言葉には、読者が自分を重ねられる場面がついています。案内が、体験の予告に変わったからです。
よくある質問
Q1. 「私たちは」を一切使ってはいけないのか
禁止ではありません。問題は、最初の一文で店側の話から始めることです。
本文の途中で、背景を説明するために使う分には問題ありません。送信前に「1文目の主語は誰か」だけ確認してください。
Q2. 会社紹介や実績は書かない方がよいのか
書かないのではなく、順番を変えるイメージです。
最初に自己紹介を並べると、読者は「宣伝文」と感じます。読者の場面やお客様の声から入り、必要な情報は後半に置く。主語転換法は、情報の順番を読者目線に並べ替える方法です。
Q3. 「あなた」を使えば読者目線になるのか
必ずしもそうではありません。
「あなたは今、〇〇で悩んでいませんか?」と決めつけると、逆に距離ができます。大切なのは、人称の代名詞ではなく、読者が場面を想像できるかです。お客様の声や具体的な場面から入る方が、自然に「自分ごと」になります。
まとめ|届け方を変えれば、同じ想いでも届く
この記事の要点を整理します。
- 「私たちは〜」で始めると、読む前に店側の話だと伝わる
- 人は、言葉よりイメージで動く
- 主語転換法は、主語・場面・声の順で読者目線へ戻す
- Before/Afterの3組で、完成文ではなく見方を身につける
文章力が足りないのではありません。届け方の視点が、店側に寄りすぎていただけかもしれません。
今日から、送信前に「1文目の主語は誰か」だけ確かめてみてください。
主語を1語変えるだけで、同じ想いでも伝わり方は変わります。
主語が整ったら、次は配信全体の作り方です。書き方・構成・続け方は「プロが教えるメルマガ・LINE配信の作り方」で詳しく解説しています。

さらに、話すように書く工夫は「文章下手な店主が常連客を倍増させた「話すように書く」法則」も参考になります。
この記事が、「読まれる文章」への第一歩になるきっかけになれば嬉しいです。

